安倍政権批判への制裁か? 映画『宮本から君へ』の助成金取り消し騒動のキナ臭さ

 10月23日、公開中の映画『宮本から君へ』に対する助成金の交付内定を、「日本芸術文化振興会」が出演者の不祥事を理由に取り消していたことが報じられた。「あいちトリエンナーレ」への文化庁の補助金取り消しに続き、文化芸術活動への政府の介入ではないかと物議を醸している。

 報道によると、助成金の取り消しは映画の出演者であるピエール瀧が麻薬取締法違反で有罪判決を受けたことに対して、「国が薬物使用を容認するようなメッセージを発信することになりかねない」と判断されたことが理由だったという。

 交付内定を取り消したのは今年7月のこと。だが、芸文振はこの決定から約3カ月もたった9月27日に「交付要綱」を改正。「公益性の観点」から助成金の交付が「不適当と認められる」場合に、交付内定を取り消すことができるようにしたのだ。まるで交付内定を取り消すことが先に決まっており、それに合わせて綱領を改正したかにも見える。

 なぜ、芸文振はここまでして『宮本から君へ』の助成金を取り消したかったのか。そこには、ある“背景”があるのではないかと映画関係者は見ている。

「プロデューサーの河村光庸氏が政府に目をつけられたのではないか、とささやかれています。河村氏は東京新聞の望月衣塑子記者の著書『新聞記者』を題材にした同名の映画もプロデュースしてヒットさせました。さらに、11月15日には森達也監督が望月記者に密着したドキュメンタリー映画『i-新聞記者 ドキュメント-』も公開予定で、この作品のプロデューサーも河村氏が務めています。いずれの映画も安倍政権には批判的な内容となっており、政府が河村氏の作品を“狙い打ち”して助成金の不交付を決めたのではないかという見方が出ています」

 望月記者といえば、連日、菅義偉官房長官と記者会見でバトルを繰り返している安倍政権の「天敵」のような存在。そんな望月記者を題材にした映画となれば、どうしても政権批判の色を帯びる。映画『新聞記者』は、内閣情報調査室に出向する若手官僚(松坂桃李)と女性新聞記者(シム・ウンギョン)との対峙を通して、日本の官邸支配、メディアコントロールの実態を暴き出そうとする内容だった。関係者によると、9月末時点で観客動員は約50万人、興行収入は5億円に迫るスマッシュヒットとなったという。

 さらに、森監督が手がけた『i-新聞記者 ドキュメント-』は、望月記者が実際に沖縄の辺野古基地問題や加計学園問題、伊藤詩織さん事件など「政権の闇」を追求していく構成になっているという。

 このような映画が前作同様にヒット作となれば、安倍政権のイメージダウンにもなりかねない。両作品に携わる河村氏は政府にとって苦々しい存在であり、『宮本から君へ』の助成金を取り消すことによって、河村氏やその周辺に政府が何らかの「圧力」をかけようとしているのではないか、という疑義があるのだ。内情を知る業界関係者はこう話す。

「当初、芸文振は『ピエール瀧さんの出演シーンを消してくれ』と要求してきました。製作サイドが『それはできない』と拒否すると、『じゃあ、(助成金は)取り消しですね』という強硬な姿勢に出てきました。今まで映画において、国の助成金が交付取り消しになった前例は記憶にありません。公開中の『解放区』という映画は内容の過激さから、修正への協議の結果、助成金を返上することが話題になりましたが(参照記事)、これは大阪市からの助成金です。映画『新聞記者』との関わりがあったかは明言できませんが、なんらかの政治的圧力が動いていると思わざるを得ません」

 10月23日には『i-新聞記者 ドキュメント-』の先行試写が都内で開催された。檀上に立った河村氏は『宮本から君へ』の助成金取り消し問題にも言及し、こう語気を強めたという。

「『政府により表現の自由が脅かされることについて非常に強い憤りを感じている』と述べていました。また『こうしたやり方には徹底して戦う。そのための準備を着々と進めている』とも話しており、河村さんの強い意志が感じられました。河村さん自身も映画『新聞記者』との関係は明言していませんでしたが、会場内からは河村さんの決意に拍手が沸き起こり、なんとしてもこの映画をヒットさせて安倍政権に一矢報いたいという雰囲気が充満していました」(先行試写の出席者)

 政権に批判手的な映画をプロデュースしたからといって、その人物が関わった映画の助成金を政府が不交付にするという事態が本当に起こっているならば、それこそ映画で描かれている「政権の闇」そのものではないか。

Source: 日刊サイゾー 芸能

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